おーい、えび。

えびのたわごと

イギリスのストライキについて思うこと

イギリスに住んでいると、毎月どころか毎週のように何らかのストライキに遭遇する。

 

しかも、そのストの影響が結構でかい。

 

地下鉄や鉄道であったり、医療従事者であったり、大学職員であったりと、どれも自分の生活に影響する業界がひっきりなしにストをする。

 

BBCによると、そんなストを支持している人はイギリス国民の60%にも上るそうだ。

www.bbc.com

 

 

僕はというと、申し訳ないがイギリスのストの多くは支持する気になれない。

 

というのも、イギリスのサービスが全般的に質がめちゃくちゃ低い(対日本比)ので、やるべきことをやってから言ってくれ、という気持ちが勝ってしまうためだ。

 

特に鉄道系。しょっちゅう遅れるくせに、遅延補償の払い戻しではいい加減なチェックでごねてくる。そんなサービスの質で月数回もストをやられたのでは、心も離れようというものだ。

 

ただ、同情したくなる業種もあるにはある。

 

公的医療(NHS)の看護師や救急車スタッフは過酷な労働条件で働いているということもニュースで耳にする。NHSにかかりたい人が何日~何週間も待たされるような現状なので、半分崩壊している制度だと思うし、これ以上スタッフが民間に流出しないよう、待遇を改善せよという主張は筋が通っているとも思う。

 

しかし、ただでさえ公的医療サービスが受けづらい状況にも関わらず、ストライキという形で労働条件を争うのは、保険料を支払っている側の人間からすると、勘弁してくれよ…という気になるのもまた事実だ。

 

 

日本では、僕のような公務員はそもそもストライキ権が与えられていない。公共性が高い職業がストを起こすと国民の生活に大きな影響が及ぶためだ。

 

看護師や救急車スタッフなどはまさに国民の命や健康に影響が及ぶ例だろう。(だからこそ、NHS看護師のストは106年前に制度が始まって以来初というのも頷ける。)

 

日本でストライキといえば、最近のそごう・西武労働組合によるものが記憶に新しい。

www.nhk.or.jp

 

このストの争点にはあまり関心がないが、ストという手段が執られたこと自体は興味深く見ていた。

 

上述したNHKの記事にもあるとおり、ストライキで雇用者と労働条件を争う現象は昨今の日本では非常に珍しくなっている。

 

その背景には”和を以て貴しとなす”文化が浸透しているというのもあるだろうし、そもそも日本は現状に変化を起こすということに対する抵抗が非常に強い国でもある。

 

だが、イギリスであまりに質の低いサービスを受けている僕としては、むしろ日本で高品質のサービス業を支えている人たちこそもっと高い賃金を要求する資格があるのではないかと思えてならない。

 

岸田政権は発足以来「賃上げ」を旗印にしているが、そもそも論で言えば賃上げとは政府が口出しする話ではなく、民間企業と労働者の間で交渉・合意されるべきテーマだ。

 

しかし、バブルの反動で硬直的になってしまった労働市場を労働者側が黙認し続け、”お上”が言わないと動かない、変われないというところまで来てしまった。

 

日本がイギリスの真似をして、ストを多発すべきだとは思わない。だが、今後の賃上げを巡る労働争議の中で、ストという交渉カードを使える状態で手に持っておくことは必要だと思うし、日本の高品質なサービスを支えている労働者にはその資格があるのではないかという点は主張しておきたい。