おーい、えび。

えびのたわごと

ロンドンのジム、なんか日本と違う

ロンドンの24時間ジムに通い始めて、だんだんと日本のジムとの違いに気づいてきた。

まずロンドンのジム、利用者がめっちゃ多い。女性と男性の割合は感覚的に4:6くらいで、ご年配の方も1割くらいいるのがすごい。

 

The Gymという最大手の系列ジムの1つなので、たまたまこの店舗がそうなのかもしれないが、平日の午前中とか、日本だと絶対に閑古鳥が鳴いているタイミングでも常に3~4割くらい埋まっている。アメリカはフィットネス大国と聞いたことがあるが、イギリスもそうのかもしれない。

 

ジムが賑わっているのは結構なのだが、利用者のマナーがあまり良くない点もちらほら目立つ。

 

まず、ダンベルの並びがまったく重さ順になっていない。

 

日本だと考えられない光景だが、10キロの横に38キロ、その横に24キロ、12キロ…といった感じでカオスになっており、2個で1組のはずのダンベルの片割れが遠いかなたに置かれていたりする。シンプルに探しにくいのも困るが、僕はこの適当な並びがめちゃくちゃ気になって仕方がない。

 

それと、ウェイトを大音量で「ガシャーン」と落とす人がだいたい1,2人いるので、ものすごく騒がしい。

ジム内には「静かに降ろしましょう、怪我しますよ」という張り紙はあるので、マナー的には一応こちらでも良くないことではあるらしい。まあ、日本でもやる人はいるし、イギリスは利用者が多い分よく遭遇するだけかもしれない。

 

自分の通っているジムには器具を使い終わった後に拭くためのペーパータオルも提供されていない。そのため、誰かの使用後が気持ち悪い人はタオル持参必須だ。

 

 

良い面もいくつかある。日本のジムよりも高重量を扱っている人が明らかに多いのでモチベーションにはなる。

 

自分の肌感覚だが、利用者の平均的な体格がまずでかい。身長が高くて横も太い人が多い。体形は絞られている人とそうでない人と様々なのだが、とにかく扱う重量はすごいので、負けていられないと思える。

 

女性がウェイトトレーニングをしている割合も圧倒的に多い。ガチめの重量を扱っている人が1人2人はいる。

 

もう1つの良い点は利用料金がめちゃくちゃ安いことだ。

 

ロンドン中心部の大手ジムで月会費が4300円ほど。参考までに秋葉原にあるエニタイムは8580円とのことなので、半額という破格の安さだ。(ちなみに設備の充実度やスタッフの数は同じくらいで、広さはロンドンの方がかなりでかい。)

 

ロンドンの家賃は東京すら比べものにならないくらい高いのになぜこんな安いのか不思議に思えるが、これも利用者の多さによる恩恵なのかもしれない。

英語が下手な研究者にも優しい世界を作ろう、という記事を読んだ感想

面白い記事を読んだ。

theconversation.com

 

日本のような非英語圏の国の研究者たちは、研究成果を論文として公表する場合、国内の人に読んでもらいやすい母国語で出版するか、世界の人に読んでもらえる英語で出版するかを選ばなくてはならない。

 

この記事では、計736の学術雑誌(ジャーナル)の論文掲載ポリシーを対象に、英語を母語としない研究者が英語で論文を投稿する時にどれだけ配慮されるかを調査したというもの。

 

予想は皆さんのご想像どおり、結果は非英語圏の人たちにとって非常に厳しい現実を示していた。

 

調査によれば、

英語の下手さだけで論文を不採用にすることはしないと宣言をしていたのは、736誌中、たったの2誌。編集者や査読者たちに対して、研究の質のみで評価するようにと教育しているジャーナルも全体の4~6%に留まる。

 

英語以外で書かれた論文を受け付けるとしていたジャーナルは全体の7%のみ。(注:受け付けるといっても恐らくフランス語とかのメジャー言語限定で、日本語のようなマイナー言語は含まれないと思われる。)

 

英語で採択された論文を英語以外の言語に翻訳してウェブサイトに公開していたのは11%。

以上が主な結果だった。

 

こういう問題を調査してくれたのが英語ネイティブの人だと良いなと思って調べてみたが、どうやら筆者はコロンビア出身の方らしい。

 

別の論文ではこんな図も。

https://journals.plos.org/plosbiology/article/figure/image?size=medium&id=10.1371/journal.pbio.3002184.g005

Cited from "The manifold costs of being a non-native English speaker in science | PLOS Biology"

 

 

英語圏に生まれた人たち、特に日本のようにアルファベットすら使わない言語体系の国の人たちにとっては、論文を英語で読むのも書くのも非常に負荷のかかる作業だ。文献を読むのも英語だし、考えるのも英語となると、あらゆるスピードがネイティブよりも圧倒的に遅くなる。文法をカンペキにしろと言われれば安くない金額を払って校正サービスを使わなければならない。

 

英語に対する恨みつらみを書きだせばきりがない。

 

このように、単に生まれ育った言語の違いによって不利益をこうむるのは言語差別というらしい。そして、国際的なコミュニケーションの大部分が英語でなされていて、英語ネイティブであることが心理的、経済的、その他あらゆる面で圧倒的に有利に働いてしているような状況は英語帝国主義というらしい。

 

確かにそうだよな、と思う。

 

人種や性別の違いで有利不利が決まるのが差別なら、言語による待遇の違いも差別になりかねないよな、と。唯一違うのは、言語は後天的に身に付けることもできるということだろうか。

 

ただ、違う言語を後天的に身に付けるのは圧倒的に時間がかかるし、コストもかかる。その負担を当然の努力とみなすことはできないはずだ。

 

 

記事の内容に戻ると、1点目の「英語の質じゃなく論文の質で評価すべし」は今すぐにでも推進すべき動きであるように思う。非英語話者も含めたより多くの人が参加できるフェアな競争環境でないと科学の発展が阻害されてしまう。

 

2点目と3点目は「英語以外の言語にも門戸を開く」ことが求められるが、これは実際問題として解決できる部分とそうでない部分があると思う。

 

「英語以外で書かれた論文を受け付けるか」という点については投稿された原稿を読める人がいないので難しいだろう。翻訳AIの技術が向上してきたとはいえ、微妙な意味合いを寸分たがわず伝えられるレベルにはない。結局、世界で一番話者が多い英語が現実的な解決策と言わざるを得ない。

 

記事では、英語翻訳サービスをジャーナル側が提供するという選択肢も調査・議論されていたが、その費用をだれが負担するかという話になり、ただでさえ高額な投稿料の上乗せに繋がってしまうかもしれない。

 

 

とはいえ、英語ネイティブにとって独占的に有利な状況が少しずつ改善されることを期待したい。

 

2024年の現時点ですら、翻訳AIの技術は言語バリアを緩和することに大きく貢献している。将来5Gやさらなる高速通信が普及すれば、母国語への同時通訳を常時流しておくことも可能になるだろう。

 

また、現在の特権階級にいる英語話者15億人の中から、言語による利益構造を改善する啓発運動が進むことを期待する。その発端が英語話者の8割を占める非ネイティブ層なのか、残り2割の純粋なネイティブ層なのかは分からない。

 

しかし、人種差別や性差別など、この100年で大きく変わった社会情勢を踏まえれば、僕たちが生きている間にこの言語に基づく利益構造にも何らかの変化があると望みを持つことはそれほど突飛な話ではないのではないかと思う。

【提唱】迷惑メールを受け取りがちな職業、研究者が1位説

研究者ほどたくさんの迷惑メールにさらされる職業もなかなか無い。

 

論文を公表すると必ず著者のメールアドレスを公開することになり、それが膨大な有象無象の輩を呼び込むからだ。どのくらいかというと、毎朝のメールチェックで迷惑メールと必要なメールに仕分けするところから始めないといけないほど。

 

我々日本人は英語の迷惑メールを受け取ることに慣れていないので、耐性も低い。博士課程や修士課程を始めたばかりの人などは尚更だ。

 

ということで、今回は研究者が受け取る迷惑メールをタイプ別に分類して、警鐘を鳴らしておくことにする。

 

パターン1:うちの雑誌で論文公表しませんか?系

先に研究者コミュニティに馴染みがない読者の方にご説明しておくと、研究者に届く迷惑メールで一番多いのは出版社(ジャーナル)からの連絡だ。

 

出版社は研究者の書いた論文を自社のHPに載せてあげる立場であり、近年は研究者側が数万から数十万円という支払うのが相場になっている。

 

HPに論文を載せてもらうには基本的に出版社が差配する厳密な審査を通過しなければいけない。

 

しかし、近頃はこの審査をガバガバにして、お金さえもらえば論文の質に関係なく載せてあげようとする悪質な出版社が存在する。

 

このような悪質業者(ハゲタカジャーナルとも言う)にとっては、論文の中身はどうでもよく、1本でも多くの論文を自社から発表することが目的となる。

 

なので、全然分野が違う雑誌の出版社から連絡が来たりする。例えば、

おたくの研究(物理学)は非常に意義がありそうですね。うち(経済学)の雑誌に投稿しませんか?

といった感じ。

 

この手のお誘いは99%迷惑メールと断言できる。なぜなら、まともな出版社(ジャーナル)には研究者の側からたくさんアプローチがあるので、わざわざ自分からお誘いなどしないからだ。

 

仮に真面目な出版社からのメールが100に1の割合であったとしても、そのような方法で研究者を集めないといけない雑誌はそもそも誰も読んでいないので、載せる意義がない。

 

パターン2:学会で発表しませんか?系

次に多い迷惑メールがこの「学会で発表しませんか?」というもの。

 

これに関しては迷惑メールかそうでないかを見分けるのはパターン1よりは難しい。が、僕の経験上、今まで一度もホンモノのお誘いメールだったことはないのでほぼスパムと考えて間違いない。

 

見分け方はまず本文を読んでみる。自分の専門分野と関係の薄い学会であればその時点で迷惑メール確定だ。

 

もし少し自分の専門と近いなというものであれば、その学会や会議の名前でググってみると良いだろう。何回も開催されているような歴史のあるものであれば、過去の登壇者を調べられるはずだが、だいたいはヒットしないだろう。

 

どうしても確証が持てない場合は、自分の周りの先生たちに、こういう学会があることを知っているか聞いてみてもよいかもしれない。狭い業界なので、まともな会議であれば周囲の誰かが知っていなければおかしい。

 

そもそも、若手研究者の多くは無名だし、よほど業績を挙げていない限り、向こうから声をかけてくれることなどない。世界中の研究者の中から自分に話が来るのは稀なことだし、その場合は基本的に知り合いのツテを辿って話が来る。

 

唐突にメールでお誘いが来たら、それは偽企画か、良くても参加費目当ての謎イベントだろう。

 

パターン3:論文を読んで感動したから研究者友達になりましょう!系

研究者ネットワークを広げたいから連絡した、という連絡もたまにある。これが最も見分けにくいパターンだ。

 

↓の方が書かれているのとほぼ同じ内容を受け取ったこともある。

ハゲタカジャーナルは、もう少し設定を詰めてからメールを送った方が良いと思う。|猫と人間が付属している眼鏡

 

筆者に来たメールには、

あなたが出版した●●という論文、読んで感動して同僚にも共有しました。将来、同じ分野で研究を深めるなら私が編集委員をしているジャーナルにも是非投稿を考えてみて。(中略)来月スペインの学会があるから、あなたももし参加されるならそこで会いましょう。念のためWhatsappの番号を交換しておきたいです。

▲▲学博士 XXXX(名前)

とあった。

 

確かに▲▲学は自分の専門分野だし、自分は参加しないが来月スペインで学会はある。しかし、先方は何の学会かを書いていない。メールアドレスを知っているのに初対面でWhatsappの番号を聞いてくる意味も分からない。

 

この時点で迷惑メールだと大体悟ったが、念のためGoogle Scholarで相手の名前を検索してみた。

ジャーナルの編集委員をするほどの研究者なら必ずそれなりの業績があるはずだが、それらしき人は1人も見つからなかった。

 

次に、編集委員をしているというジャーナルを調べてみると、やはりハゲタカジャーナルリストに入っていた。

 

ということで、おそらく架空の人物だ。もし返信してwhatsappの連絡先を知られると次は何が起こるのか、想像すると恐ろしくなってくる。

 

 

 

以上が代表的な迷惑メール3パターンだ。特に論文を初めて発表したとか、プレプリントに載せたという方は、これから来るであろう迷惑メール攻撃に十分ご注意いただき、安全な研究生活を送っていただけると幸いである。

日本のマスコミ大丈夫か

大谷選手の結婚や通訳の方の報道を含め、有名人への取材姿勢が目に余る。

 

プロ野球選手会はプライバシーの尊重を求める声明を出したそうだ。皮肉なことに、そのニュースを報じた新聞社のニュース欄には大谷選手の記事が上から下までずらりと並んでいた。

 

需要と供給の世界だから、そのようなプライベートな情報を求めている消費者が大勢いるんだろうなとは思う。自分にとっては心の底からどうでもいいので、下世話なニュースは極力見ないようにしている。

 

だが、これだけ下世話なニュースが流されている裏では、切り捨てられて報道されなかった世の中に有益な情報もきっとあって、その分だけ間接的な不利益をこうむっている気がしてならない。

 

日本のマスコミってここまで俗っぽかったっけか。

 

マスコミが『国民の知る権利が~』とか『報道の自由が~』とか言ってるのをよく聞くけど、権利って義務を果たすからこそ行使できるもののはず。プライバシーの保護はマスコミの義務ではないのだろうか。

 

まあ今に始まったことではないのだが。

官僚から社会人博士への道 vol.17 ~博士学生は絶対知っておくべきお役立ちツール4選(初級編)~

この記事は官僚である筆者が自主休職して社会人博士を目指す様子をお届けする雑記帳である。

 

先日、論文を書いたという記事を出した。その論文が無事にアクセプトされて出版という運びになったのでここにご報告しておく。

 

さて、その論文を書く上で、これは絶対に知っておいて損はなかったというツールがたくさんある。知っていると知らないでは効率に雲泥の差が出るので、今日はその初級編として4つを一気にご紹介したい。

 

お役立ちラインナップ

 

1.文献管理ソフト

www.usaco.co.jp

論文を書く際には必ず引用リストを示さなければならない。その時に圧倒的に役立つのが文献を一括管理するソフトだ。

 

色々なソフトが出ていて、特に大きな違いはないと思われるが、ひとまず代表的なものとしてEndNoteを紹介しておきたい。

 

論文を書く際、いちいち元文献の情報をコピペして、番号を振って、書式を整えて、、、、などと面倒な作業をしなくても、ポチっとボタン一つで勝手に整理してくれる。

 

本文で文献の引用を消した場合は巻末の文献リストからも自動的に削除してくれるので、本文と巻末を行ったり来たりする必要もなくなる。

 

EndNoteのメリットの1つは日本語のトラブルシューティングが比較的多くネットに転がっているところ。ユサコ株式会社というところが代理店的なことをしていて、動画で使い方を説明しているので、周りに教えてくれる人がいなくても安心なのも良い。

 

 

2.システマチック・レビュー用のオンラインアプリ

博士課程に入ると必ずやることといえば、既往研究のレビューだ。中にはただのリテラチャーレビュー*1ではなく、システマチックレビューという形でより厳密に作業して、それを査読論文として公表する人もいるだろう。

 

このシステマティック・レビューの作業を劇的に効率化してくれるのがRayyanというオンラインツールである。

www.rayyan.ai

 

まず、システマチックレビューの際に誰もが苦労するのが、何千本という文献をもれなくサーチして自分の論文に含める、含めないの判断をつけなければいけないところだ。検索エンジンが違えば文献の書誌情報も微妙に変わるので、

 

「あれ、この文献タイトルさっきも見たやつだったか…?筆者は同じかな…?」

などと、行ったり来たりするだけでも相当な労力だ。

 

このツールを使うと、検索結果一覧を読み込んで検索エンジンごとにリストを作成し、重複している文献を自動的に判定して教えてくれる。手作業でやってみたことがある人からすれば、これだけでも涙が出るほど便利な機能だ。

 

ステマチックレビューの作業で厄介な点はまだある。それは、自分の論文に含める、含めないの判断をするに当たって、1人ではなく通常2人以上で実施し、食い違いがあれば別途協議するなどの追加作業が発生するという点だ。

 

Rayyanでは、どういう理由でその文献を含める、含めないと判断したかを1つずつ記録する(ラベル付け)ことができ、各作業者がその作業を独立して別々に行うことができる。当然、含める、含めないの判断が食い違った文献だけをピックアップする機能もあるので、後から2人で判断を再協議するときにとても役に立つ。

 

こちらのブログが使い方を紹介されているので興味のある方は是非。

【保存版】無料ツール『Rayyan』で文献レビューを10倍効率化!

 

 

3.プレプリント・サーバー

プレプリント・サーバーというのはあまり聞きなれない方も多いかもしれない。ざっくりと言えば、査読を受ける前の論文、つまり出版される前段階の論文原稿を公表(プレプリント)できるウェブサイトのことである。研究成果をより迅速に、かつオープンにしていこうというアカデミアの流れを受けて、2010年代後半くらいから普及してきたものだ。

 

プレプリント・サーバーのメリットは何といっても、アホみたいに長い査読プロセスを受けずとも研究成果を世の中に迅速に!タダで!公開することができるという点だ。

 

研究者の世界では、長々しい査読を受けている間に他の研究者が先に成果を出版してしまい、二番手に甘んじてしまった、という話は腐るほど聞く。が、最近はプレプリント段階の論文でも第一発見者としての先進性は認められるという風潮になってきているらしい。コロナの研究のように、世界中の研究者が先を争うような分野では非常に有用だ。

 

筆者が利用したことがあるのは下に載せたResearch Squareというサイトだが、これもたくさん種類があるので自分の研究分野で人気のあるサイトを使うと良いだろう。

Home | Research Square

 

ちなみにデメリットとしては、プレプリント・サーバーに論文を載せると有象無象のハゲタカジャーナルから「うちに投稿しせませんか?」という勧誘メールが届くようになることだ。メリットと見比べて利用を検討いただければと思う。

 

 

4.研究者版フェイスブック ResearchGate

最後に紹介したいのは、研究者版のフェイスブック的存在、ResearchGateである。

https://www.researchgate.net/

 

使い方としては大きく2つの機能がある。

1つは、自分の研究を紹介するプロフィール帳的な使い方である。自分の出版した論文をまとめて掲載することもできるし、著作権まわりのルールを満たしていれば論文の全文をPDFとして載せることも可能なのだ。

 

また、「あの論文、読みたいけどジャーナルのHPでは有料で読めないんだよな…」

ということがあれば、一度ResearchGateで探してみてほしい。著者がPDFを載せているケースも多いし、もしなくてもボタン一つで論文の著者に論文PDFをリクエストする機能がある。研究者は自分の論文を広く読んで欲しいので、断られることはまずない(気づかれず放置されることはあるが…)。

 

もう1つの機能は、自分が興味のある研究者たちをフォローすることができ、メッセージもやり取りできる点だ。まんまSNSである。

 

フォローしている研究者が論文を出してResearchGate上で更新すると、フォローしている自分のタイムラインにもその投稿が流れてくるので、最新情報を見逃すことがない。

 

また、自分の論文をレビューしてくれた査読者が、後日ResearchGateの機能を使って激励のメッセージを送ってくれることもあった。

 

 

 

以上、代表的なお役立ちツール4選をお届けした。今回は初級編ということで、知っているよという人も多かったかもしれない。逆に言えば、それくらい多くの人が利用している便利なツールなので、是非一度使って効率化を図ってみてもらえると幸いである。

 

(シリーズのバックナンバーはこちら↓)

ooiebi.hatenablog.jp

 

*1:何らかのテーマについて既往文献をまとめるレビューの方式。文献検索の際に厳密な方法論を必ずしも必要とせず、どの論文を入れてどれを入れないかの基準を事前に決めておかなくてもよいなど、システマチック・レビューよりもふわっとしていてよい。

【再投稿】役所から始める在野研究のご紹介

筆者は官僚を休職して社会人学生をしている。

 

今日のテーマは、在野研究のご紹介ということで、大学や研究機関に属さずに研究するという酔狂な趣味のありかたをご紹介したい。*1

 

目次

 

1.在野研究を始めたきっかけ

筆者が中央省庁で働きながら初めて論文を書いたのは入省5年目の頃だった。

 

当時はようやく霞が関の仕事に慣れてきて、土日を余暇に費やせるくらいには余裕のある生活を送ることができていた。しかし、それまでが忙殺の日々だった反動で、趣味という趣味もなく、退屈な休日を過ごすばかりであった。

 

そんなある日、先輩が論文を書いているという話を聞いて興味を持った。なぜそんなことをしているのか聞いてみると、先輩曰く、

 

「行政のお仕事はチームワークが基本だから、どんなに自分が良い仕事をして貢献したとしても自分の名前が残ることはない。その点、論文は一生名前が残るのが良い。」とのこと。

 

続けて曰く、「エビデンスに基づく政策決定(Evidence-based Policy Making: EBPM)が叫ばれて久しいけれども、そう都合よく大学や研究所が行政ニーズにあった知見を届けてくれるとは限らない。エビデンスがないなら自分で作ってもいいじゃないか。」と。

 

単純な筆者はなるほど面白そうな趣味だな、と思うと同時に、ひょっとしたら自分*2にもできるんじゃなかろうかと考えたのだった。

 

2.実際にやってみた

家に帰ってさっそく研究テーマを考えるところから始めてみた。

 

ここで早くも行政に携わっていることのメリットに気づいた。それは、研究のネタになるような行政課題は身の回りにごろごろ転がっていたのだ。

 

筆者は当時、ある交渉を担当していたのだが、交渉のテーブルで必ず問題になる争点があった。しかし、その争点については主張の根拠となるデータがないため、自分も相手もただの言いっぱなしになるばかりで、いつも時間を浪費していた。

 

この根拠を客観的に提示することができれば、行政上も意義があると考えた。

 

幸い、必要になりそうなデータもネット上で公表されているため、それらを加工・統合する二次分析というやり方で結果が出せそうであった。

 

研究テーマが決まったらあとは方法論を固め、実際に分析をしていくばかりである。この段階で、仕事上でお付き合いのある有識者たちに方法論の不備がないか見てもらったところ、彼らも興味を示してくれたので、チームを組んで論文を書いていった。

 

論文が国際誌に出版されたのは動き出してから約9か月後のことであった。

 

 

3.初めての方への注意点

上に書いたように、初めての論文執筆は驚くほどトントン拍子に物事が進んだ。

 

しかし、そこにはたくさんの幸運があったことも記載しておくべきだろう。

 

まず、在野研究でハードルになることの第1位がデータ集めである。

 

僕の場合、運よくオープンデータを統合して分析すれば答えが出る設問だったが、多くの場合は1次データを自分で集めなければ研究疑問に答えられない。そのため、研究疑問の設定とそれに必要なデータ集めの大変さは常にセットで考える必要がある。

 

過去の論文もオープンアクセスが増えてはいるものの、データベースに自由にアクセスできないと不便なこともまた事実だ。そんなときは自分の出身大学の図書館を利用できる場合もある。また、データベースにアクセスできる人、例えば大学に所属している人などと組んで作業することも一案だ。

 

第二に注意すべき点は勤務先との関係である。

 

もし論文を執筆するなら、自分の名前と所属先は必ず書かなければならない。大学に客員ポストの肩書を持っているとかでない限り、自分の所属先の省庁を記載することになる。

 

そのため、論文の中で「組織を代表する意見ではない」旨の但し書きを記載する必要がある。また、仮にその但し書きをしたとしても、役所や我が国に不利になる内容である場合は勤め先から「待った」がかかる恐れもある。

 

筆者の場合は勤め先の管理職に原稿の段階で見せて許可を取り、その後ジャーナルに投稿するという段階を踏んでいる。役所の肩書を付けないでくれと言われれば、その場合はindependent researcherとかprivate consultantとかを名乗ることもあるだろう。

 

第三に投稿費の問題がある。

 

助成金を申請するなども考えられるが、在野研究は基本的には私費で活動するしかない。そして、昨今オープンアクセスのジャーナルは投稿料が少なくとも数万、多くは数十万円という世界だから、お財布に厳しいことこの上ない。

 

率直に言って、このお金の部分は割り切りが必要だ。論文の投稿といえば、よっぽど優秀でない限り1年に1回出せれば御の字といった頻度だから、数万なら贅沢な趣味だと思ってすっぱり支出する考え方もあるだろう。

 

学会誌への投稿であれば、その学会の会員は無料になることが多い。共著者に学会員を巻き込んで一緒に論文を作るという方法も節約になる。

 

予算を持っている本職の研究者に声をかけて運よく共著に入ってくれれば、その人が投稿費を負担してくれることもあるかもしれない。ただ、この方法は予算目当てだと思われてしまったら信頼を失うし、予算に余裕のない研究者もたくさんいる。

 

結局、その投稿費を払ってでもジャーナルに公表したいと思えるメリットがあるかどうかが大きいだろう。今のご時世、プレプリントサーバーや自分のブログだって世の中に出す手段にはなる。

 

 

4.最後に

大学などに属さず研究を行うにはそれなりのハードルもある。

 

論文を書いたところで給料が上がるわけでもないし、人事査定でアピールしても「ふーん、珍しいことしてるね」と言われて終わるのが関の山だろう。

 

しかし、行政課題の最前線にいる公務員だからこそ出せる価値というのは必ずあると思う。

 

なぜなら、自分が直面している行政課題は、自分の後任や、諸外国の行政官にとっても課題であり続けるかもしれないからだ。

 

そして、その課題にこの国で最も精通しているのは、おそらくその担当者なのだ。

 

興味を持っていただけた方には、より具体的な研究者の事例があるので、こちらの本も参考にしていただければ幸いである。

www.akashi.co.jp

*1:うっかり記事を半分消してしまったので追記して再投稿。

*2:修士課程を出たし、修論も一応ちゃんと書いたんだから、査読論文も書けるでしょ、という程度の根拠。意外となんとかなる

【挑戦】イギリス留学中の筆者が共通テストの英語を解いてみた

筆者はイギリスに留学して約1年ちょっとの学生である。

 

さて、今年も受験のシーズンがやってきた。そんな中、どうやら今年の共通テストの英語は過去イチ難しかったという評判をちらほら耳にした。

 

そこで考えた。

 

なんやかんや1年間も留学してるし、さすがに今なら満点いけるんじゃないか…?と。

 

今回の記事はそんなことで始まった共通テストへの挑戦記録である。

 

 

結論、満点は無理でした

いきなりオチを言ってしまうが、リーディングの点数は100点満点中の92点だった。

 

よくやった方と見るべきか、それとも留学しているくせに満点も取れないのかと嘆くべきか、正直微妙なところである。いや、本音としては非常にくやしい。

 

でも一言言わせてほしい。

 

これは普通にクソむずいっす。

 

留学という強力な課金チートをしたにも関わらずこんなに難しいんだから、こんなの受けさせられる高校生は気の毒である。

 

間違えたところはここ

間違えたのはすべて大問6、ジャンルでいうと学術系記事の読解であった。

 

博士課程にいる僕にとっては一番得意であるはずの内容であるが、3問落としてしまった。

www.asahi.com

 

間違えた問題1つめ。42番。

 

文中に説明のあったRetrospective timingという用語の具体的な例を選ばせるもの。

Retrospective timingが何かというと、例えば、複雑な図形を見せた人と簡単な図形を見せた人の2グループを作った実験で、複雑なのを見た人はそれを見つめていた時間を長く感じ、簡単なのを見た人は短く感じた、的なやつらしい。

 

いや、既にややこしい。

 

そもそもretrospectiveとかいう単語を高校生にぶつけるか?というところだが、たまたま筆者は「過去を振り返っての」的な意味だと知っていた。

 

にも関わらず選択肢で迷う。Retrospective timingの例として、「母の携帯番号を記憶する」か「今日何時間くらい働いたか振り返る」の2つで止まってしまう。

 

正解は「今日働いた時間を振り返る」の方。今考えるとそりゃそうか、と思うのだが、解いている最中は、「時計を見ずに働くことなんて無いから出勤時刻と退勤時刻って把握してるよな…??じゃあ時間なんて変動しようがないか」とか思ってしまった。社会人の闇である。

 

 

 

お次は45番。トウガラシの辛さについての説明文で、これはシンプルに飛ばし読みしてしまっていたのが原因だったので反省。

 

 

 

最後は48番。辛さ耐性について本文から推測できることを選びなさい、という問題。

 

選択肢のうち、

  • トウガラシに耐性が低い人も辛さに慣れることができる
  • ワサビへの耐性が弱い人は高い辛さレベルに耐えられない

 

のどちらかを選ばなければならなかった。

 

正解は前者で、本文中に

暑い気候に住む人はトウガラシをより多く消費する傾向があり、それゆえ、繰り返しトウガラシにさらされることで耐性がついていく

的な文があるからだ。

 

しかし、困ったことに後者の方も本文にこんな一節があった。

ワサビの辛さレベルは1,000くらいとみなされていて、尺度としては低い方だ。辛いのが苦手な人でもワサビは食べられるという人がいるが、あれはワサビの辛み成分の濃度が低いから。

 

となると、ワサビすら耐えられない人はもっと高い辛さレベルには当然耐えられないのではなかろうか。正直この問題は答えを見ても納得がいかなかったが、予備校の解説などでは触れられていなかったので、誰か納得のいく解説を教えてほしい。

 

 

解いてみた感想

冒頭にも書いたとおり、普通に難しかったというのが正直なところ。

 

さすがに留学という課金をしてきたおかげか、単語が分からないとか、何が書いてあるか意味が取れないというのはなかった。しかし、英語が読めても読解力がなければこれは正解できないな、という感覚が最初から最後まであった。

 

それと、純粋に分量が多いというのもあった。自分はバカ正直に1から10まで読まないと気が済まないタイプなので余計にそうだったかもしれないが、全部の問題を解き終わったころには残り3分を切っていた。マークシートを記入する受験生はもっと余裕がなかったことだろう。

 

科学的な文章にはパラグラフごとに書き方の決まりがあるし、日常的に読んでいるタイプの文章なので筆者にとっては読みやすかったが、短編小説に関する大問なんかは普段はあまり読まないタイプの文章だったこともあり、相当時間が取られた。

 

TOEICにあるような単なる文法問題がなかったのも良かった。正しい前置詞や言い換え表現などは確かに知っているに越したことはないが、それはむしろ「会話」で必要な能力であって、「読む」能力とはあまり関係がない。このあたりは新しい発見であった。

 

 

 

体験記としては以上になる。共通テストはなんといっても無料でチャレンジできるので、英語学習者のみなさまにおかれては腕試しとしてお試しいただくと良いのではないだろうか。