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伊藤計劃「虐殺器官」~ド定番だろうが古典だろうが真に面白かった本だけを紹介していく~

ド定番だろうが古典だろうが真に面白かった本だけを紹介していくシリーズ。

今回は伊藤計劃の「虐殺器官」をご紹介する。

 

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この本のクオリティには本当に度肝を抜かれた。

まずSFの生命線でもあるリアリティ。戦場の砂埃や温度、臭いまで感じさせるほどで、表現力がずば抜けている。はっきりいって生々しすぎる(誉め言葉)。作品の時代設定は2030年代くらいだろうが、本作に登場する近未来のガジェットの数々もディテール描写が抜群で、未来で見てきたのではないかと冗談抜きで思ったほどだった。後に作者が映像学科の卒業ということを知り、なるほど映像が先にイメージとしてあったのかもなと納得した。ちなみに僕のお気に入りは空飛ぶ海苔である。

 

文体はブラックユーモアがこれでもかと効いており、随所に出てくる雑学も絶妙なセンスで知識欲を刺激してくれる。

そして何より、ストーリーが爆発的に面白い。4回目の再読を終えた今も、1ミリの隙もないなと改めて感心したところである。そして、この圧倒的技量で描かれた本作が作者伊藤計劃のデビュー作だと知ったときには「おいおい、マジかよ…」とただただ驚くばかりだった。

 

だが、将来を期待された伊藤計劃は34歳という若さで亡くなられてしまった。長生きされていれば一体どれほどの数の名作が生み出されただろうかと思わずにはいられない。

 

ちなみに、「虐殺器官」の先の世界を描いたとも言える次作「ハーモニー」もブラックな文体や完成度の高さは引き続き高いクオリティを維持している。ジョージ・オーウェル1984年」の21世紀版だと勝手に思っているので、「1984年」が好きな人にはこちらもオススメする。