この記事は官僚である筆者が自主休職して社会人博士を目指す様子をお届けする雑記帳である。
先日、論文を書いたという記事を出した。その論文が無事にアクセプトされて出版という運びになったのでここにご報告しておく。
さて、その論文を書く上で、これは絶対に知っておいて損はなかったというツールがたくさんある。知っていると知らないでは効率に雲泥の差が出るので、今日はその初級編として4つを一気にご紹介したい。
お役立ちラインナップ
1.文献管理ソフト
論文を書く際には必ず引用リストを示さなければならない。その時に圧倒的に役立つのが文献を一括管理するソフトだ。
色々なソフトが出ていて、特に大きな違いはないと思われるが、ひとまず代表的なものとしてEndNoteを紹介しておきたい。
論文を書く際、いちいち元文献の情報をコピペして、番号を振って、書式を整えて、、、、などと面倒な作業をしなくても、ポチっとボタン一つで勝手に整理してくれる。
本文で文献の引用を消した場合は巻末の文献リストからも自動的に削除してくれるので、本文と巻末を行ったり来たりする必要もなくなる。
EndNoteのメリットの1つは日本語のトラブルシューティングが比較的多くネットに転がっているところ。ユサコ株式会社というところが代理店的なことをしていて、動画で使い方を説明しているので、周りに教えてくれる人がいなくても安心なのも良い。
2.システマチック・レビュー用のオンラインアプリ
博士課程に入ると必ずやることといえば、既往研究のレビューだ。中にはただのリテラチャーレビュー*1ではなく、システマチックレビューという形でより厳密に作業して、それを査読論文として公表する人もいるだろう。
このシステマティック・レビューの作業を劇的に効率化してくれるのがRayyanというオンラインツールである。
まず、システマチックレビューの際に誰もが苦労するのが、何千本という文献をもれなくサーチして自分の論文に含める、含めないの判断をつけなければいけないところだ。検索エンジンが違えば文献の書誌情報も微妙に変わるので、
「あれ、この文献タイトルさっきも見たやつだったか…?筆者は同じかな…?」
などと、行ったり来たりするだけでも相当な労力だ。
このツールを使うと、検索結果一覧を読み込んで検索エンジンごとにリストを作成し、重複している文献を自動的に判定して教えてくれる。手作業でやってみたことがある人からすれば、これだけでも涙が出るほど便利な機能だ。
システマチックレビューの作業で厄介な点はまだある。それは、自分の論文に含める、含めないの判断をするに当たって、1人ではなく通常2人以上で実施し、食い違いがあれば別途協議するなどの追加作業が発生するという点だ。
Rayyanでは、どういう理由でその文献を含める、含めないと判断したかを1つずつ記録する(ラベル付け)ことができ、各作業者がその作業を独立して別々に行うことができる。当然、含める、含めないの判断が食い違った文献だけをピックアップする機能もあるので、後から2人で判断を再協議するときにとても役に立つ。
こちらのブログが使い方を紹介されているので興味のある方は是非。
【保存版】無料ツール『Rayyan』で文献レビューを10倍効率化!
3.プレプリント・サーバー
プレプリント・サーバーというのはあまり聞きなれない方も多いかもしれない。ざっくりと言えば、査読を受ける前の論文、つまり出版される前段階の論文原稿を公表(プレプリント)できるウェブサイトのことである。研究成果をより迅速に、かつオープンにしていこうというアカデミアの流れを受けて、2010年代後半くらいから普及してきたものだ。
プレプリント・サーバーのメリットは何といっても、アホみたいに長い査読プロセスを受けずとも研究成果を世の中に迅速に!タダで!公開することができるという点だ。
研究者の世界では、長々しい査読を受けている間に他の研究者が先に成果を出版してしまい、二番手に甘んじてしまった、という話は腐るほど聞く。が、最近はプレプリント段階の論文でも第一発見者としての先進性は認められるという風潮になってきているらしい。コロナの研究のように、世界中の研究者が先を争うような分野では非常に有用だ。
筆者が利用したことがあるのは下に載せたResearch Squareというサイトだが、これもたくさん種類があるので自分の研究分野で人気のあるサイトを使うと良いだろう。
ちなみにデメリットとしては、プレプリント・サーバーに論文を載せると有象無象のハゲタカジャーナルから「うちに投稿しせませんか?」という勧誘メールが届くようになることだ。メリットと見比べて利用を検討いただければと思う。
4.研究者版フェイスブック ResearchGate
最後に紹介したいのは、研究者版のフェイスブック的存在、ResearchGateである。
使い方としては大きく2つの機能がある。
1つは、自分の研究を紹介するプロフィール帳的な使い方である。自分の出版した論文をまとめて掲載することもできるし、著作権まわりのルールを満たしていれば論文の全文をPDFとして載せることも可能なのだ。
また、「あの論文、読みたいけどジャーナルのHPでは有料で読めないんだよな…」
ということがあれば、一度ResearchGateで探してみてほしい。著者がPDFを載せているケースも多いし、もしなくてもボタン一つで論文の著者に論文PDFをリクエストする機能がある。研究者は自分の論文を広く読んで欲しいので、断られることはまずない(気づかれず放置されることはあるが…)。
もう1つの機能は、自分が興味のある研究者たちをフォローすることができ、メッセージもやり取りできる点だ。まんまSNSである。
フォローしている研究者が論文を出してResearchGate上で更新すると、フォローしている自分のタイムラインにもその投稿が流れてくるので、最新情報を見逃すことがない。
また、自分の論文をレビューしてくれた査読者が、後日ResearchGateの機能を使って激励のメッセージを送ってくれることもあった。
以上、代表的なお役立ちツール4選をお届けした。今回は初級編ということで、知っているよという人も多かったかもしれない。逆に言えば、それくらい多くの人が利用している便利なツールなので、是非一度使って効率化を図ってみてもらえると幸いである。
(シリーズのバックナンバーはこちら↓)