おーい、えび。

えびのたわごと

G20外相会合の出席見送り騒動について霞が関の役人が思うこと

最近のニュースで政治家に失望した話が2つあったので記事にしたい。

 

ひとつめはこれ。

www3.nhk.or.jp

 

G20外務大臣会合に大臣を派遣しなかったということで散々叩かれている例のあれ。

 

麻生氏の言い分としては、

内閣や外務省から参議院側に相談された形跡もなく、このようなことが二度と起こらないようにしてもらいたい。

とのこと。

 

霞が関で国際関係の部署にいた僕からすると、この批判は筋違いも甚だしい。

 

海外出張では必ず「国会根回し」が発生する

まず整理しておきたいが、G7とG20は毎年行われる主要国会議で、基本的には首脳会合(サミット)と、個別分野ごとに開催される大臣会合の総称である。

 

こうした大臣などによる海外出張の際には必ず発生する作業の1つがいわゆる国会根回しだ。要は〇〇大臣が●●という会議に参加するため、いつからいつまで出張したい、ということを与野党の国会対策委員(を担当している国会議員)に説明に行き、承諾を貰うという作業である。

 

外務省がほんとは外務大臣を行かせたかったのか、もともと副大臣が参加する線で調整していたのかは分からない。

 

が、いずれの場合でも国会根回しは必ずあるので、麻生氏が述べている「参議院側に相談された形跡もなく」は明確に間違っている副大臣が最終的に出張した以上、国対委員の議員らに相談は必ず入っており、麻生氏本人がご存じないだけだ。

 

責任のなすりつけあいはもう十分

細かい話はいいとして、こうした事実誤認を軽々しく口にして批判をかわそうというのがとても残念だった。

 

何より、外務省の最終決定権者であり今回のG20不参加を決めた本人の林外務大臣には名指しでの批判をしない。党内の身内だけは庇いながら外務省などの反論する手段に乏しい組織に対して責任をなすりつける感じが非常に不快だ。

 

また、与野党間で繰り広げられた責任の押し付け合いも大変みっともなく、失望を禁じ得なかった。今回は誰が悪いというよりかは政府と国会議員全体の意識の低さが招いた自体であり、それぞれが次に生かさなければならない教訓だったはずだ。

 

 

ついでに、このG20欠席問題についての私見も述べておく。

 

今年のG20外務大臣会合は外交防衛上も重要な時期の開催で、しかも議長国は親ロシアだが日本とも良好な関係にあるインド、日本はG7議長国という色々と注目すべきポイントがあるものだった。

 

しかし、報道は上記のドタバタの方に引っ張られ、肝心のG20外務大臣会合の本体に関する関心は薄れてしまった。

 

イギリスに現在住んでいて思うのは、日本の報道があまりに本題の部分を扱わなさ過ぎるということだ。読者・視聴者は面白おかしいドタバタには食いつくが(本来なら一番知らなければいけない)小難しい本題、今回で言えばG20外務大臣会合では何が決まって、何が決まらず、それによって将来にどういう影響があるのか、という話はウケないと思われているのだろう。まあ実際そうなのかもしれないが。

 

それと、大臣が出席したのは国の損失だ!という批判も多々見かけたが、大臣ではなく副大臣が参加したことで具体的にどういう損失があったのか説明できる人はどれくらいいるのだろうかとも思う。

 

日本の評判が下がったとか発言が軽く見られるとかいうふわっとした部分もあるだろうが、僕個人としては、G20という重要な機会に然るべき立場の人が出なかったことによる経験値の損失が気がかりだった。

 

大臣と副大臣とでは与えられている職権は全く違う。外務大臣は内閣の一員として、いざというときには安全保障上の重要な意思決定にも関与する。そういう重要な立場にある外務大臣こそがG20でロシアやアメリカ、中国、インドなど他国の外務大臣の人物をその目で確かめ、官僚からの事後報告ではなく生の温度感で国際情勢のダイナミクスを体感してこれなかったというのが残念だった。

 

大臣や副大臣には国会議員がなる。しかし、就任した段階から与えられた役職に相応しい専門性や経験を持っていることは稀である。外交の舞台ともなれば経験している人の方が少ないだろう。そんな国会議員にとって、G20のような重要な国際会議に出席して、多少なりとも自分から背景など勉強もして日本代表として発言をする、というのは大きな成長の機会なのだ。

 

 

1つめの話から既にだいぶ長くなってしまったので続きは別記事にて。

ooiebi.hatenablog.jp

 

※この記事は所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解を書き連ねたものです。また、なるべく正確な情報を記載するよう努めていますが、必ずしもすべての情報の事実関係の裏付けを取り切れていないことがあります。