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官僚から社会人博士への道 vol.16 ~正しいスラムの歩き方 実践編~

スラムの歩き方実践編。前編はこちらから↓

ooiebi.hatenablog.jp

 

基礎知識も身に付けたところで、いよいよスラムに足を踏み入れる実践編のアドバイスに進んでいこう。

 

1.一人では歩かない。

スラムで絶対に守らなければいけないことの第一位は、一人で歩かないということだ。

 

そもそもスラムは警察が介入しない無法地帯になっていることが多い。つまり、どれだけ気をつけていても犯罪にあったり、思わぬ怪我をするリスクがあるということを理解しておく。

 

また、スラムではgoogle マップや標識などが利用できないことがほとんどだ。スラムの内部は入り組んでいて、ガイド無しでは帰ってこられなくなる危険性すらある。

 

以上を踏まえ、スラム内部に詳しい人をどうにかして見つけ、一緒に来てもらうことが必須である。信頼できるツアーがあればそれを利用すれば良いし、ツテをたどって現地の研究機関の人を紹介してもらうのも良いだろう。

 

随行はできれば2人以上をオススメする。ガイドはスラムの住人と話し込んでしまうことがよくあり、1人だとその間に自分が無防備になる恐れがあるからだ。

 

なお、ナイロビの場合、現地ガイドには1回につき1,000円程度を支払っていた。雇用条件は事前にはっきり合意しておき、安全な場所に帰ってきてから支払うべし。

 

2.お金になりそうなものは極力持っていかない。

次のアドバイスは、お金になりそうなものは持っていかないということだ。

 

まず前提として、スラムでは「外国人」=「金持ち」という認識がされると思っておいてほしい。実際、一日に100円~200円の収入で生活する住民から見れば、飛行機に乗ってわざわざスラムまで来る物好きはよっぽど金に余裕があるとしか見えない。

 

スラムにはギャングも潜伏していることが多い。金の匂いを見せてしまうと後をつけられて被害にあう恐れもある。

 

スマホを持っている人はスラムの住民にも意外といるが、極力見せないことが賢明だ。写真を撮りたい場合は、ガイドに伝え、周りの安全を確認してからにする。

 

パスポート*1やカードもできればホテルに置いていった方がよい。ガイドに払う謝礼と交通費をカバーするだけの最小限の現金をいくつかのポケットに分散して持つのが良い。

 

3.金品はなるべくあげない。

1つ上の項目とも関係するが、お金や物はなるべくあげてはいけない

 

スラムで生活する人たちは本当に生活に窮しているので、お金への執着は我々日本人では想像もできないほどに深い。そんな彼らの生活圏に急に大金持ちの外国人が来たら、彼らは躊躇なくお金を無心に来る。

 

かわいい子ども達や、見るからに病気の老人などに取り囲まれることはザラだ。

 

しかし、一旦金品をあげてしまうと際限がない。そして、一人にあげると他の人に伝わり、次々と人がやってくる。周りに人が来れば来るほど、トラブルに合う可能性は高まっていく。

 

スラムはそういう場所なので、お金をせびられるのが苦手だったり断るのが心苦しかったりする人はそもそもスラムに足を踏み入れない方が良い。

 

3.現地語は少しでも覚えていく。

たとえ英語やフランス語が公用語の国であっても、スラムでは現地語しか話せない人が多い。

 

そんな住民たちと意思疎通し、少しでも気分よくスラムから帰ってくるためには、現地語の理解が欠かせない。

 

元気?、ありがとう、またね、といった基礎的な挨拶くらいは覚えていくと住民も笑顔で返してくれることが多い。そのほかによく使うのは、「名前は何?⇒●●だよ」とか、「中国人じゃないよ、私は日本人だ。」あたり。

 

4.良い服、良い靴は避ける。

良い服、良い靴は着用しないというのは、お金持ちのように見せないということの他にも重要な意味がある。

 

それは、スラムがとても歩きづらく、汚く、そして臭いからだ。

 

スラムには基本的にゴミ回収サービスがないので、生ごみは川や道端に山積みされている。そのごみを牛やヤギ、ブタ、犬、ニワトリなどの家畜がつついている。

 

下水道もほとんど整備されておらず、家庭から出る排水が道の表面を流れている。時にはう●ちやおし●こを飛び越えて歩かなければならない。

 

道はほとんど舗装されておらず、でこぼこだらけで転びやすいし、粉塵が舞っている。そのような環境であることを前提として、汚れてもいい服、歩きやすい靴で臨むことだ。

 

足元だけでなく、頭上にもトタン板が突き出していたり、剥き出しの電線が掛かっていたりするので、決して油断してはいけない。

 

5.スラム内部の店は利用しない

スラムの中には驚くほどたくさんの店があり、八百屋、肉屋、服屋、金物屋、食堂などがある。料理は一食あたり数十円ほどだ。

 

特に食品を扱う店についてのことになるが、これらの店は極力利用しないことをオススメする。理由はその衛生状態だ。

 

スラムで扱われる野菜、くだもの、容器、レジ袋などは付近の川を使って洗っていたりする。この川は基本的にスラムから来る汚水でひどく汚染されているため、一見キレイな見た目であっても細菌や寄生虫などに感染するリスクがある。

 

ぼっとん便所から汲み取ったものを捨てている川の下流で洗った野菜と言えば、どれくらい危険かはお分かりいただけるだろう。

 

お肉屋にしても、スラム内で飼われている家畜を売っていることが多い。この家畜はスラムで捨てられた生ごみを食べたり、川の水を飲んで生きているため、重金属や化学物質、寄生虫などを含んでいる可能性がある。肉を切るまな板も当然清潔ではない。

 

十分なトイレや医療設備のないスラムで倒れたくなければ、何も口にしないことが賢明だ。

 

おわりに

以上がスラムの歩き方実践編である。

 

繰り返しになるが、スラムは決して安全な場所ではない。比較的ましな区域でも道端で大麻を普通に育てていたり、メタノール入りの密造酒を作っていたりして驚くことばかりだ。

 

スラム内部には教会や学校、簡易宿泊所など、実に色々な施設があり、1つのコミュニティとして成立している。

 

しかし、そのコミュニティのルールや秩序は、日本人の常識からすれば考えられないことばかりだ。ここには書けなかった悲惨な話もたくさんある。

 

もしそんなスラムに関心を持ち、リスクを承知の上で何かを学びたいという方がいれば、是非この記事を熟読した上で、スラムに足を踏み入れていただきたい。

*1:ただし、ケニアでは滞在中の外国人はパスポートの携帯が必須であるため、警察に咎められると賄賂をせびられる可能性もある。なお、筆者はパスポートの提示を求められたことは一度もない。