ド定番だろうが古典だろうが真に面白かった本だけを紹介していくシリーズ。
今回は高野和明の「ジェノサイド」を紹介する。
まず申し上げたいのは、この本をまだ読まれていない方は本当に幸せだということである。僕が改めて書き立てるまでもなく、本書が多くの方にとって最高の1冊になるであろうことは数々の受賞実績が保証している。単行本が書店に並んだ当時、あまりに褒めたたえられていたため、あまのじゃくの僕は(はいはい、いつもの販売戦略ですね。その手は食いませんよ。)と謎の食わず嫌いをしてしまったのだが、文庫版が出てから読んでみて全国の書店員さんに心の中で思わず詫びを入れた。
あらすじはリンク先にもある通り、
創薬化学を専攻する大学院生・研人のもとに死んだ父からのメールが届く。傭兵・イエーガーは難病を患う息子のために、コンゴ潜入の任務を引き受ける。2人の人生が交錯するとき、驚愕の真実が明らかに――。
とある。これだけではどういう内容の本なのかほとんど想像できないのだが、あらすじを書かれた方を責めてはいけない。なにせ、何を書いてもネタバレになってしまうほど怒涛の展開の連続と圧倒的な世界観が本書には込められており、限られたあらすじ枠には到底収まらないのだ。
あえて補足するとすれば、これはミステリというよりはSF×エンタメとでもいうべきジャンルだと言える。本作で出てくる謎はいわゆる殺人事件のような局地的なものではなく、地球規模で展開される壮大なものだからである。どちらかと言えばジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」とかに近いタイプの小説だ。
むしろ、このミス、推理作家協会賞、文春ミステリベスト10といったミステリ分野での賞を取っているのが不思議なのだが、それもこの小説の規格外の面白さを示す証拠なのではないかと思う。なお、本屋大賞で2位だったのは少しグロいシーンがあるためだろう。そういうのが苦手な方は避けた方がいいかもしれない。
文庫本では上下2巻でそれなりの分量がある作品だが、上巻を読んで下巻に手を伸ばさない方がいるのだろうか?と思いたくなる傑作である。未読の方は是非土曜日の朝から読み始めることをオススメする。